9月24日(月)マン島の鉄道と街並み

 

今朝も朝から雨。時々晴れたりもするものの、降るときはザザザーと音がするほどで風も強い。今日は一日ビデオ編集に終始する事としよう。
日本から電話。「あのさ、日本の首相誰になったか知ってる?」
「福田でしょ?」というと「なんだ知ってたのか」とがっかりしていたが、まあ日本の政治は、そんなもんだよなあ。実際に情報が入っていなくても、既定路線しかあり得ないから。

そういえば昨年もデナシオンの取材中に首相が変わった。僕はフランスにいる時イギリス人からその事を言われ「今度の首相は右か?左か?」と聞かれたのを覚えている。まさかあれからちょうど1年でまたまた変わるとはねえ。
もしかしたらやるかな?と思ってずーっと部屋のテレビをつけているのだが、日本の政局はこちらでは全然ニュースにならないようだ。
天気予報をやっていたが、この不安定な空模様は明日も続きそう。まあ降るなら今のうちに降って、週末は晴れておくれ!
しかしイギリスのテレビも、延々とスタジオバラエティーみたいな番組ばかりやっていて、密度薄いなあ。陰でADが「はい拍手!」と煽っているのが目に見えるようだ。

 
                     
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夕方雨も上がったので、昨日みつけたレンタカー屋に予約を入れに。その帰りに夕食。
昨夜食べた「スパイシーメキシカンチキン」があまりにぱさぱさで不味かったので、今日の夕食はあの眼鏡っ子メイドのいるフェリーポート前のレストランにしてみた。でも今日はもっとがっちりタイプの女性で、途中から顔はフレイシャ、体は小柄ながら黒のスーツをびしっと着込んだゴッド・ファーザーのアル・パチーノのような男性に変わった。
前回食べたローストラムは今イチだったので何にしようか悩んでいたら、ウエイトレスの読み上げるメニューに「ラザニア」が聞こえた。「Yes!ラザ〜ニア!!」とオーダー。
ちょっと量は少なかったが、久しぶりに許せる食事。うーん、イタ飯は偉大だなあ。
今日は昼食抜きで早めの夕食という計画。そのためほかに客はほとんどいなかったが、一組男の家族が。お父さんと小学校高学年くらいの双子の子供。濃紺のサマーセーターと白のワイシャツは、ケンブリッジかハリー・ポッターの高級私立の制服かな?ブラウンの前髪をきっちり切りそろえてブルーの瞳で、白人子供の優等生ってなんでみんなこうなるのかなあ。これじゃまるでこれはヒトラー・ユーゲントの優等生だぁ。
勘定は訳の分からないコインを積み上げて、アル・パチーノに選んでもらう。少し財布が軽くなった。

帰り道、海岸沿いに切り株をクロスさせて設置している所を発見。チェーンソーを振り回しているおじさんがいたので聞いてみたら、やはりデ・ナシオン用のセクションだそうだ。

 
                     
       
 

マン島のトランスポーターとプロムナードを左右に走る馬車鉄道 ↑

 

見事なビール腹のおじさんだったが、彼もトライアルをやるとの事。選手人口のおっさん化、高齢化は万国共通なのだろうか。あああ、先行きが…

 
       
 

バイク関係の模型屋さんには自作の金属モデルやDVDも。日本と違いちゃんとトライアルもあったが、おやまあ、スティーブ・コリーさん、こんなの出しているの?でも16.99ポンド(4200円)はちょと高いっしょ?

 
 
9月25日(火)マン島の鉄道と気になってたマン島ミュージアム

頭の中に響くのは、あのテーマ曲と石丸賢二郎のナレーション。今日の「世界の車窓から」は、マン島保存鉄道で島で一番高いスネフェル山まで行ってみましょう。ちゃらっちゃらちゃーちゃー♪。この番組はテレコム・ジャパンの制作でおおくりします。

夜のうちはまた雨が降っていたものの、朝になると青空が広がっていた。編集を少し進めたものの、ここでしかできない事もしておこうと観光を決意。そもそも昨日レンタカー予約に成功してから、それならもう一日早く借りて、島を1周してみてもいな、と思っていたのだ。
でも「地球の歩き方」を見て鉄道に乗ってみる事にした。

レンタカー屋を探しまわった経験から、街はもはや庭のようなもの(^o^)
エレクトリック・レイルウエイと書いてある、あそこが駅だろう。
1km少しの道のりを歩いていくと、あったあった。さっそくチケットを購入。往復で9ポンドだそうだ。
やってきたのは、おお、江の電が遊園地の客車を引っ張っているような、木造の2両編成。迷わずサイドがオープンタイプの遊園地客車の方に乗る。

 
       
折り返し運転になる電車は、車掌がパンタグラフに着いているヒモをひっぱり、反対側に回す。昔のトロリーバスのような1本タイプのパンタグラフなんだけど、後ろに引きずるような形で電線に接触させるためだ。そういやプロムナードを走る馬車も、方向を変える時は馬を後ろから前につれてきていた。同じ非常にアナログな発想である。


電車は時速30km/hくらいだろうか、それでもすごく揺れる。40km/h出したら脱線しそうだ。レールのつなぎ目のガタンゴトンとブレーキもやたらうるさい。おまけに踏み切り(と言っても遮断機はなく、単に道路と線路が交差しているだけ)を通るときは、手前から「ぴいーっぴいぴいぴいーっ」としつこく警笛を鳴らす。「おらおら、オレ様が通るぞ、線路優先だ、どけどけい」って感じだけど、これじゃ暴走族のぱらりらぱらりらとあまり変わらないかもね。沿線に住宅がないから出来る事だろう。

まるで御簾のようなブラインド     
上は板張りの天井と裸電球

電車は海岸辺の絶景を北上、右に海、左に牧場を展開しながら、きっちり30分で乗換駅、ラクシーへ。ここから登山鉄道にチェンジ。
今度も車両自体はあまり変わらないちんちん電車タイプだけど、パンタグラフは針金ハンガーを逆さまにしたような形。前進後退で向きを変える必要はないようだ。ヨーロッパにも鉄っちゃんがいるのか、おじさん達がやたらと写真を撮っている。

 

空中の電車用電線の向こうがスネフェル山。右は安物ハンガーのようなパンタグラフ

今度の車両は遊園地客車ではなく、箱詰めオンリーの1両編成。乗り込むとすでにかなり混んでいて座るのがやっと。それもなぜかお客さんはお婆ちゃんばかり。え?もしかして女性専用車両(しかもシニアのみ?)と思ってしまうぐらい。
車両はこれも木造で、登りのためかスピードはかなり遅い。にもかかわらず、走るとぎしぎし音がする。後から知ったが、この登山列車は「アプト式」といって車輪のほか歯車で強制的にレールを登る設計なのだそうだ。
窓も木枠で、食器棚の扉のように左右にスライドするタイプ。当然手動なんだけど、列車が山を登る振動と重力で、じわじわと開いてくる。するとものすごく冷たい空気が入ってくるので、お婆ちゃんが手で閉める。

 
       
                     
       

おーい大丈夫かぁ?分解しないで頂上まで行けるのかぁ?この車両と乗ってる
お婆ちゃんと、いったいどっちが年上なんだぁ?
車窓に広がる風景は殺伐としていて、ひたすら広大でただ山があるだけ。人間、こんな風に何もない景色を見るとなんで感動するんだろう。
電車はさらに登り海も見えてきた。その向こうにはぼんやりと陸地が。すると車掌がやってきて「あれはスコットランドだ」「あっちはイングランドだ」と客に説明して回る。車内放送のシステムがないんだね
イギリス本島が望めるのは地元でも珍しい絶景らしく、見られたのはラッキーなんだろうけど、ゆないてっどきんぐだむの地域分けの仕組みはよくわからない。

30分ほどで登山列車は頂上に到着した。
降りてみたものの、当然何もない。一応電車の待合室というか軽食堂はあるものの、それで?という感じ。駅から細い道があったので、ちょっと歩いてみる。山のてっぺんに立って、カメラを1周パンして、スコットランドからイングランド、アイルランドまで画面に収めてしまおうではないか、と画策したものの、こりゃものすごい風だ。ヨーロッパ中の風がここに集まっているのではないだろうか、と思われるほどの風速風圧で、カメラは三脚に立てても全く無駄。三脚の脚が洗濯物のように風にバタバタ舞っている感じで、一瞬でも気を抜くとぶっ倒れる事必至。とてもパンなんかできる状態ではない。
あのお婆ちゃんのうちひからびかかっている何人かは、もうきっと北極海まで飛ばされてしまったのではないだろうか。登った人と下る人数が合わなそうで、やばいっすよ。
そんな頂上に、なぜかどこでも必ずいる男子おばかな3人組。大学生くらいの青年達が無駄に風と闘いじゃれている。3人まとめて写真を撮ってくれと言ってきたのでシャッターを押したが、たったそれだけでも風に逆らうのは、ちょっとした命賭けの冒険だった。

海の向こうに見えるイギリス本島を見て騒ぐおばかな3人組↑

 
徒歩で山を下りるおばかな3人組と 登山列車での下山

とにかく風と寒さでどうしようもないので、早々に電車に乗り込み下山。車窓からは、あの3人組が山を徒歩で降りてきているのが見えた。途中にも駅があるからそこまで歩くのだろう。バカはどの国でも元気だなあ。

乗り換え駅のラクシーまで下山して、「ラクシー・ビッグ・ホイール」なる巨大水車があるとのこと、歩いて行ってみる。登山鉄道も登りの時、これが見えるところではスピードを落としていた街の名物らしい。150年ほど前にこの街に水道を送るために作られたとのことだが、大した物ではないのに有料だったので外から映像だけ撮って駅に戻り、お昼を食べてからダグラスに戻る事にする。
軽食堂で、おお、車でないからビールが飲めるではないか。電車万歳! それとチキンバーガーを頼む。合わせて6ポンドほど。チキンバーガーはシンプルだったが比較的食えた。おーい、イギリス料理よ、アメリカンファーストフードに負けてどうする!

     

ラクシー・ビッグ・ホイール           振り向くとイギリスの田舎風景が広がる

で、ダグラスに戻る電車だが、おっと、13時25分発ではないか。今13時10分。逃すと次まで1時間ないので、あわててバーガーをかき込む。店にはなぜか坂本九の「上を向いて歩こう」がかかっていた。これじゃまるで高度成長期のサラリーマンの出勤だあ。
大慌てで駅に行くと、あれ、電車が来る様子がない。聞いてみると13時25分の便は8月でおしまい。あと1時間待て、とのことだった。うーん2時間に1本とは、やっぱりここは「ど」のつく田舎なのかなあ。

何はともあれ無事ダグラスに戻り、もうひと遊び。来た時から気になっていた、マン島ミュージアムに行ってみた。
ここは無料で入れる博物館なのだが、驚いたのは入場者をまず出迎えたのが、TTレースの栄光を飾った名車の数々だった事。AJSからNorton、当然HONDAもあった。オートバイ好きには嬉しいけど、へー、この島はそういうところなんだねえ。
途中同じく見学中のおばちゃんが声をかけてきた。その人はロード系の人でBMWに乗っているそう。僕がドギー・ランプキンの名前を出すと最初は「?」の感じ。でもどうやら僕の発音で「Lampkin」が「Rampkin」になっていたようで、通じた後は「もちろん知っているわよ」であった。
博物館の展示物はバイクコーナーを経て、マン島の歴史や過去の文化解説に変わっていく。ケルトやバイキングの歴史よりオートバイが優先するなんて、変わったところだなあ。逆に言うともしTTレースがなかったら、この島はケルトの石柱とバイキングの錆びたサーベルしかない漁村だったってこと?
この感じでデ・ナシオンも盛り上がってくれるといいけどね。

 
   
1920年頃までのバイク。サイドバルブにディスクブレーキ?異常に大きな減速比に自転車のようなペダルのついているものも。
 
日本マシンの世界進出は1959年のこのホンダ37番から始まった
       
燃えたサイドカーや傷ついたメットなど、不幸な歴史もそのまま展示。

ところであなたはだあれ?小野田さん??
右はTTレースのコースを走るシミュレーションゲーム。

 

 マン島の歴史紹介なんか、バイクの後回しだぜ。

夕食は、博物館を探す時見つけておいたイタリアンレストラン。周りの店はみんな閉まっていたけど、ここは開いていた。おーい、メイン通りの他のレストランよお、夕方6時に店閉めるなよな。
ビールはちょっと小さかったけど、イエイ、カルボナーラ!!

9月26日(水) 世界の車窓から南へ、マン島の機関車編に続くHOME