9月28日 (金)パドック&レセプション

藤秀とB&Bで朝食を食べていると、日本人が降りてきた。もしやデナシオン観戦にやってきたのかと思ったら、大学生が夏休みを利用してイギリス1周旅行の途中だそうだ。そーかー、もう10月だというのに、学生界はまだ夏休みなんだあ。

続いて、健ちゃん二郎君も食堂にやってきた。
そもそもこのB&Bは昔黒山チームがマン島での世界戦の時利用したのを教えてもらった所なので、彼らがいるのはむしろ当然なのである。
昨日となりの部屋でテレビつけたり話したりごそごそしていたのは、どうやら黒山兄弟だったようだ。

B&Bを出発、プレスルームで昨日もらったセクション配置図を頼りに、まず車でコースを一周。規模としては江ノ島付近の湘南海岸を会場にしている感じで、世界戦としてはそれほど大きなものではない。
でも一般車両ががんがん通っている中にレース用トライアルバイクが混ざっているのは、なんだか不思議な光景だ。そもそもマン島はTTレースでノーナンバーのバイクが公道を200km/h以上のスピードでぶっ飛ばす所。世界戦を走るトライアルバイクはまがりなりにもナンバーもついているので、全く問題ないんだけどね。
車でセクションを探しながら走っていると、朝B&Bで会った日本の大学生が、電車に乗っているのが見えた。

セクションは女子はかなり易しめが15、男子は相当ハードが18もある。特に海岸の断崖絶壁につくられているいくつかは壮絶。切り立つ崖の向こうに半島が見えるロケーションは素晴らしく、「名曲アルバム」に続いて「火曜サスペンス劇場」がいくつでも作れてしまうくらい。
でも歩いて覗き込んだだけでも「こんな所をオートバイで走る競技は危険きわまりないので、これを禁止する」という法律を作りたくなってしまう。ちょっとミスったらバイクは海に転落、人間は岩の角で頭こつんと打って人生終了だよ。ああ選手じゃなくてよかった(笑)。

パドックに戻ると、おや、今回はスペイン人がもう来ている。イギリス人もそろてっていたので、ランプキンにインタビュー。スペイン人を追いかけてプラクティスエリアに行ってみると、すでに藤波君と小川君も練習に入っていた。
小川君のライディングを見たランプキンが「ガッチ,おおガッチ!ガッチ!!すごいじゃないか。来年はモンテッサで世界戦を戦え、藤波はもうお払い箱か」と笑っていた。
スペイン人は相変わらず上手いが、ファハルドを見た藤波君が「あいつはもう終わっとるで。見てみ、あそこでスタンディングも出来よらん」と小川君に話している。果たして日本はスペインチームにどこまで迫り、もしかしたら超える事ができるのか。
しかしそのキーとなるはずの黒山、野崎両選手が練習に来ない。
コントロールタワーに戻ると、パドックの隅っこでまだマシンを組んでいる最中だった。
イギリスのスコルパインポーター、ナイジェル・バーケット氏の用意したテントは、ちょっと小さくて博多の屋台程度かなあ。見ると他に選手はおらず、バーケットさんは日本の二人のために来てくれたよう。それはありがたい限りだが、ちょっと寂しい光景だなあ。
そのテントの中で、自分でメンテも出来る史君はわりと忙しそうにしていたが、二郎君にお任せの健ちゃんは完全に暇そう。
貴久君が車でやってきて「健ちゃん、サンドイッチでも買いにいかへん?」と連れて行った。

そうそう、バーケットさん、僕の取材用のバイクもちゃんと用意してくれていた!やったねさすがイギリス人。日英同盟はダテじゃないぜい!
女子世界選手権も無事開催されているようだ。
今入った情報だと、女王ライア・サンツが5点をひとつとってしまったのに対し、イリス・クラマー他何人かがオールクリーンで1ラップ目を終えたそう。ライアの、ランプキンを超える8年連続世界チャンピオンの座が危ないという展開のようだ。
あ、今イリスが2ラップ目をゴールした。あの喜びようはどうやらライアに勝ったのかな?ああ、やはり優勝だ。1点差だって。
ベルギーの最終戦と同時に女子世界戦も第2戦がキャンセルになっている。第1戦は優勝ライア、2位イリスだったけどここでイリス優勝2位ライアだと同ポイントで、最終戦で勝った方が優先でチャンピオンになる。ということはこれはまさに新チャンピオンが誕生した瞬間の訳で、こりゃあドラマチックな展開だったねえ。でも女子世界選手権は放送権がないから、取材できないのよ。こんな優秀なジャーナリストがはるばる日本から自腹で来ているというのに、FIMは目先の小銭を追って損をしている事に気がつかないかなあ。

史君や二郎君、メカニックが頑張って、ヤマハチームのバイクは、昨年よりは早く仕上がって来ているようだ。史君は一度組み上がったバイクをまたばらしてセッティングを直しているが、健一号は夕方には出来上がった。
08タイプのスコルパは黒と白の2トーンを基調としていて、引き締まって軽そうに見える。なのに健ちゃんのリヤスプロケットは、その調和をまるで壊すような赤。使った後は持って帰らなくてもいい使い捨てなのだそうだが、それを一郎さんがペンキで塗ったのだそうだ。うーん,黒山さんらしい。
健ちゃん、貴久君、ガッチ、おだ〜に選手会長らはする事がなく、スコルパテントの横でだべっている。スペインチームはサッカーで遊ぶ余裕。彼らは優勝して国に帰ると、賞金が一人30万円くらいも出るのだそうだ。今時日給30万円の仕事なんて、滅多にあるもんじゃないよね。一方持ち出しが基本の日本チーム。う〜ん、スペインに次々有能な選手が産まれるのは,この辺の違いなのだろうか。
そこにイギリスチームの情報が。
今年もランプキン、ジャービス、ダビルにモリスという陣営だったイギリスだが、そのシャウン・モリスが1週間ほど前に怪我をしてしまったのだそうだ。練習中にハンドルが折れ、吹っ飛んだ金属部品が左目を直撃。失明するかどうかの瀬戸際との事。
今モリスはイギリス選手権でもジャービスと2ポイント差で競っていて、最終戦で勝った方がチャンピオンらしいのだが、それも絶望との事。イギリスの、もしかしたら世界の次世代を背負う選手にとって、あまりに大きな負傷である。
デナシオンのイギリスチームは、代わりに今年のジュニアチャンピオンのマイケル・ブラウンが出るとの事であった。

さて今夜はデ・ナシオン恒例出場国紹介レセプション。夜8時からだと言っていたが、なんと8時15分には始まった。遅れを誤差の範囲内におさめるなんて、さすがはイギリス人!またしてもスペインとはちょっと違う所を見せてくれたね。しかもわずかな遅れは、完全に全員が遅刻していたイタリアチームを待っての事かもしれない。今年の参加は男子は18カ国と少し少ないが、レセプションはそこそこの盛り上がりで滞りなく終わった。開始時刻とかが守られると、取材する方はずいぶん疲れが軽減するもんなんだねえ。
公道コースでついつい右車線を走っていた大陸ライダーたちよ、少しイギリスと日本の島国根性を見習った方がいいんじゃないか? (笑)

 
レセプションで浮かれる馬鹿二人。左は関係者?右はアダム・ラガ

1ミスでイリスに負けて女王の座を失ったライアの暗い顔…

金曜日の深夜、マン島にはまた雨が降ったが明け方には上がった。土曜日はいよいよメインイベントの第1弾、女子デ・ナシオンが始まる。

9月29日(土)女子デナシオンに続く